販売店契約とは?IT法務に精通した弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月4日 by it-lawyer

この記事を書いた弁護士

スタートビズ法律事務所 代表弁護士

スタートビズ法律事務所代表弁護士。出身地:京都府。出身大学:東京大学。 主な取扱い分野は、「契約書作成・チェック、問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、顧問弁護士業務、IT・スタートアップ 企業の法律問題」です。

IT・スタートアップ企業の契約書・労務問題はお任せください。

弁護士のプロフィールはこちら

こんにちは,IT企業のための弁護士,宮岡遼です。

今回は,販売店契約について説明したいと思います。

販売店契約は実務でも頻出度が高く、ビジネスにおいて重要な契約です。

しかし、適当な契約書で販売店契約を締結してしまい、失敗してしまうことが多いようです。

販売店契約書は法的に検討すべき点が多く、しっかりと内容を精査してから契約書を締結する必要があります。

それでは、説明していきます。

販売店契約とは?

販売店契約とは、メーカー自ら商品販売の手段や販売ノウハウなどを持たない場合に、販売手段や販売ノウハウを持っている事業者との間で、販売に関する提携契約を結び、商品の販売を拡大しようとする際に締結するものになります。

販売店契約と類似するものに代理店契約というものがあります。

販売店契約は、商品を購入してもらう相手との契約をメーカーではなく販売店が直接結ぶもの、代理店契約は、商品を購入してもらう相手との契約をメーカーが直接結ぶものとなります。

販売店契約と代理店契約でどのような違いが出てくるのかを整理したのが以下の表になります。ここでは、商品を最終的に購入してもらう相手をエンドユーザと呼びます。

販売店契約 代理店契約
売買契約の契約主体 販売店とエンドユーザ メーカーとエンドユーザ
商品の価格決定権者 販売店 メーカー
代金未回収リスクの負担者 販売店 メーカー
在庫リスクの負担者 販売店 メーカー
売上 販売代金 販売手数料
利益 転売差益 販売手数料
問合せ窓口 販売店 メーカー

代理店契約についてはこちらの記事を参照してください。

代理店契約とは?IT法務に強い弁護士が解説

なお、IT企業が締結する販売店契約は、従来の販売店契約や代理店契約とは異なる法的スキームの整理や検討が必要となっております。

ITサービスの販売店契約とは?IT法務に強い弁護士が解説

販売店契約において抑えるべき法的ポイント

独占販売権と非独占販売権

販売店契約では、メーカーが販売店に与える販売権を独占的なものとするか、非独占のものにするかを決定することから検討します。

ここでいう独占とは、当該販売店以外の他の販売店にも商品を販売してもらうことができない状態にすることをいいます。

なお、メーカー自身が販売店を介さずに自ら商品を販売することができるか否かということは、独占非独占のはなしとは別に、それについて販売店契約書で定めることとなります。

メーカーの思惑と代理店側の思惑

メーカーとしては、複数の販売店を通じて商品販売をした方がより多く商品を販売できると考える場合には、非独占の販売権を販売店に付与しようとすることがあります。

また、販売店としても、後述するようなメーカーからの一定数量の商品の購入義務を負って在庫リスクを負うリスクを避けたいと考えるときは、非独占の販売権のみの付与をメーカーに求めることがあります。

他方で、メーカーとしては、1つの販売店に独占的な販売権を付与して一定数量の商品を購入する義務を負わせて、予め想定した販売数量を売り切ることで予測可能な販売計画を進めたいと考えるときは、独占的な販売権を販売店に付与しようとすることがあります。

販売店としても、商品の独占的な販売権を得ることにより売上を大きく伸ばしたいと考えるときは、独占的な販売権をメーカーに求めることがあります。

販売権を独占とする場合は義務が加重される

独占的な販売権が付与される場合、それに伴い、販売店の最低購入数量規定、競合品の取り扱いの制限規定、営業地域制限規定などがセットで規定されることが多いです。

最低購入数量規定は、メーカーから販売店が購入する最低数量を定める規定であり、この規定により販売店はメーカーから最低限仕入れなければならない数量を仕入れる必要があります。

しかし、このような規定は無制限に認められるものではなく、独占禁止法2条9項5号の「優越的地位の濫用」に違反してしまうリスクがあります。

この判断においては、メーカーが自己の取引上の地位が販売店に優越していることを利用して最低購入するようを定めたといえるか、正常な商慣習に照らして不当な不利益を販売店に与えるものであるといえるかなどの点が考慮されます。

競合品の取り扱い規定とは、販売店がメーカーの競合品や類似品の取扱いを禁じるような規定のことです。

しかし、このような規定は無制限に認められるものではなく、独占禁止法および公正取引委員会告示である一般指定第11項の「排他条件付取引」に該当してしまう場合があるので注意しなければなりません。

一般指定についてはこちらから

この判断においては、メーカーが「市場における有力な事業者」といえるか、メーカーの市場における地位や影響力からして市場閉鎖効果が生じる場合といえるかなどの点が考慮されます。

営業地域制限規定

営業地域制限規定は、販売店が商品を独占的に販売できる地域を都道府県単位などの一定の地域に限定するような規定をいいます。

しかし、このような規定は無制限に認められるものではなく、独占禁止法2条9項の「不公正な取引方法」および一般指定第12項の「拘束条件付取引」に該当してしまう場合があるので注意が必要です。

この判断においては、メーカーの市場におけるシェアが20%以下であるか否かや、メーカーが指定した地域外での販売を制限しているか、市場における価格維持効果が生じる場合であるかなどの点が考慮されます。

公正取引委員会が策定した独占禁止法や一般指定の解釈の指針となる「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」を参照して注意深く検討することが必要です。

アップデート商品に関する規定

販売店にとっては、アップデート商品などの改良品が取り扱えないにも関わらず最低購入数量などの義務を負うことを避けるため、アップデート商品も販売店として扱えることを規定しておくことが考えられます。

再販売価格の拘束 

メーカーが販売店の再販売価格を決定したい場合には、販売店契約ではなく代理店契約としなければなりません。

販売店契約としたにもかかわらず、メーカーが販売店の販売価格を決定できるとする規定を入れてしまった場合、原則として、独占禁止法2条9項第4号の「再販売価格の拘束」に該当します。

この点については、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」を参照しながら、この規定に該当してしまわないか慎重に検討することが必要です。

販売店契約について弁護士に依頼するメリット

販売店契約については、以上のとおり、代理店契約との違いに注意しながら、独占禁止法違反にならないようにドラフティングないしレビューをして契約書を作成することが必要となります。

販売店契約書に精通した弁護士に依頼することで、これらのリスクを除去したり最適化した契約書を作成し、ビジネスを前に進めることができます。

スタートビズ法律事務所では,顧問契約の相談を無料でお受けしております。お気軽にご相談ください。

▼契約書作成についての記事はこちらから

起業するタイミングで整備する契約書とは?IT法務に強い弁護士が解説

▼その他契約書記事についてはこちらから

IT企業特有の契約書・利用規約とは?IT法務に強い弁護士が解説

この記事を書いた弁護士

スタートビズ法律事務所 代表弁護士

スタートビズ法律事務所代表弁護士。出身地:京都府。出身大学:東京大学。 主な取扱い分野は、「契約書作成・チェック、問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、顧問弁護士業務、IT・スタートアップ 企業の法律問題」です。

IT・スタートアップ企業の契約書・労務問題はお任せください。

弁護士のプロフィールはこちら

TEL:03-5288-5728 FAX:03-6332-8813 受付時間 平日10:00~18:00 土日祝休み TEL:03-5288-5728 FAX:03-6332-8813 受付時間 平日10:00~18:00 土日祝休み

メールでのお問い合わせ 24時間対応

コンテンツメニュー