ITサービスの販売店契約とは?IT法務に強い弁護士が解説

最終更新日: 2024年1月25日 by it-lawyer

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スタートビズ法律事務所 代表弁護士

スタートビズ法律事務所代表弁護士。出身地:京都府。出身大学:東京大学。 主な取扱い分野は、「契約書作成・チェック、問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、顧問弁護士業務、IT・スタートアップ 企業の法律問題」です。

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こんにちは、IT企業のための弁護士、宮岡遼です。

今回は、ITサービスの販売店契約について説明したいと思います。

ITサービスの販売店契約は、メーカーと販売店が契約するような通常のこれまでの契約とは異なる観点からの検討が求められます。

それにもかかわらず、契約書を締結していなかったり、メーカーと販売店が契約するような契約書で契約を締結している場合、想定外の損害賠償責任などの負担を負わせられたり、提携先に正当な権利を主張できなかったりしている例が多々あります。

それでは、説明していきます。

ITサービスの販売店契約とは?

従来の販売店契約とは

一般的に、販売店契約とは、メーカー自ら商品販売・営業の手段やノウハウなどを持たない場合に、販売手段、営業手段やノウハウを持っている事業者との間で、販売・営業に関する提携契約を結び、商品の販売を拡大しようとする際に締結するものになります。

販売店契約と類似するものに代理店契約というものがあります。

販売店契約は商品を購入してもらう相手との契約をメーカーではなく販売店が直接結ぶもの、代理店契約は商品を購入してもらう相手との契約をメーカーが直接結ぶものとなります。

一般的な従来の販売店契約についてはこちらの記事を参照してください。

販売店契約とは?IT法務に精通した弁護士が解説

一般的な従来の代理店契約についてはこちらの記事を参照してください。

代理店契約とは?IT法務に強い弁護士が解説

従来の販売店契約とITサービスにおける販売店契約の違い

直接使用許諾型か再使用許諾型か

ITサービスにおける販売店契約や代理店契約は、ITベンダーがエンドユーザとの間でサービスに関する契約関係を直接持つ「直接使用許諾型」か、販売パートナーがエンドユーザとの間でサービスに関する契約関係を持つ「再使用許諾型」かという整理が適切なものとなります(以下の図のとおり)。

【再使用許諾型】 【直接使用許諾型】

なお、ITサービスに関する契約では、従来のメーカーの立場を「ITベンダー」、販売店・代理店の立場を「販売パートナー」といったりします。

再使用許諾型と直接使用許諾型の違いは以下の表のとおりとなります。

通常の販売店契約がメーカーとエンドユーザが直接契約せずに販売店とエンドユーザが商品の契約を結ぶことから、ITサービスにおける販売店契約では、ベンダではなく販売パートナーがエンドユーザとITサービスに関する契約をする再使用許諾型の契約として捉えるのが理解しやすい思います。

再使用許諾型 直接使用許諾型
ITサービスをエンドユーザと契約する主体 販売パートナー ベンダ
ITサービスの価格決定権者 販売パートナー ベンダ
代金未回収リスクの負担者 販売パートナー 契約による
在庫リスクの負担者 考慮する必要がない場合が多い(なお、取引形態により考慮する必要がある場合もある)
販売パートナーの売上 再使用許諾料 ベンダからの販売手数料
販売パートナーの利益 転売差益 ベンダからの販売手数料
窓口業務 販売パートナーとすることが多い ベンダとすることが多い
販促費用 販売パートナーが負担することが多いが、契約次第 販売パートナーが負担することが少ないが、契約次第

再使用許諾型において抑えるべき法的ポイント

契約の基本類型の明示

ベンダが販売パートナーに与える販売権を独占的なものとするか、非独占のものにするかを決定します。

ここでいう独占とは、当該販売パートナー以外の他の販売パートナーにもITサービスを販売してもらうことができない状態にすることをいいます。

なお、ベンダ自身が販売パートナーを介さずに自らITサービスを販売することができるか否かということは、独占非独占の点とは別に規定することとなります。

二次的な使用権の販売についての規定

民法のデフォルトルールでは、原則として、販売パートナーがさらに別の者にITサービス使用権の販売をすることはできません(民法644条の2)。

したがって、その点について可能とする場合には契約書に明示的に定めておく必要があります。

三次的な使用権の販売については、ベンダが直接関係しないところですので、これを禁止したいベンダは、販売パートナーがこれを防止するような措置をする義務を販売パートナーとの間の契約書で明示的に定めておく必要があります。

使用環境の提供規定

販売パートナーがエンドユーザにITサービスを販売する際に、販売パートナーが当該ITサービスのデモをエンドユーザに行う必要があることがあります。

そのために、販売パートナーはベンダが提供するITサービスの顧客ではないにもかかわらず、販売パートナーが当該ITサービスにログインしてサービス内を巡回できるようにしておく必要があります。

そのために、ベンダに対し、販売パートナーが商品であるITサービスを使用する環境を提供する規定を義務として構成して契約書に明示しておく必要があります。

保守業務に関する規定

再使用許諾型においては、ベンダが販売パートナーに対して、販売パートナーがエンドユーザに対して保守業務を負うとすることが多く、その点について明確にするため規定しておきます。

窓口業務に関する規定

再使用許諾型においては、ITサービスに関してエンドユーザと直接の契約関係を持つのは販売パートナーであるため、販売パートナーが窓口業務を担当する旨の規定を入れることが通常です。

なお、再使用許諾型においても窓口をベンダが担当すると定めることも考えられます。

商品たるITサービスについてはそれを提供しているベンダの方が詳しく、エンドユーザに正確な説明をしたい、販売パートナーが不正確な説明をして商品のリピュテーションリスクを下げたいとベンダが考える場合もあるからです。

他方で、再使用許諾型とすることでできるだけ業務負担を減らしたいとベンダが考える場合には、販売パートナーに窓口業務を負担させ、不正確な説明などを行った場合の損害賠償責任についてしっかり記載しておくという対応も考えられます。

販売対価に関する規定

直接使用許諾型においては、エンドユーザからの利用料金をベンダが直接受け取る場合と販売パートナーが代理で受領してその後ベンダに送金するという2つのパターンがあり得ます。

しかし、再使用許諾型の場合には、ベンダがエンドユーザから利用料金を受け取れるとする実益がなく、販売パートナーが受け取れるとすることが一般的かつ通常の方法となります。

監査に関する規定

再使用許諾型契約でクラウドサービスなどのようにベンダがエンドユーザのITサービスの使用状況を自ら確認できない場合、販売パートナーのエンドユーザに関する報告が適正か否かを監査できるような規定を入れることがあります。

この監査により販売パートナーの報告が事実に反していたりした場合には、損害賠償額を予定するなどして、販売パートナーに適正な報告をさせることを担保することなどが考えられます。

ITサービスの販売店契約について弁護士に依頼するメリット

 以上のとおり、ITサービスの販売店契約においては、通常の販売店契約とは別途の観点からの検討が必要であり、ITサービスの内容に応じて柔軟に契約内容を検討して定める必要があります。

 ITサービスの販売店契約書に精通した弁護士に依頼することで、リスクを最小化し、自社の事業にアクセルをかける契約書を作成することができます。

 スタートビズ法律事務所では,ITサービスの販売店契約書の作成の相談をお受けしております。お気軽にご相談ください。

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