システム保守契約とは?IT法務に精通した弁護士が解説

IT契約書

こんにちは、IT企業のための弁護士、宮岡遼です。

今回は、システム保守契約について説明したいと思います。

システム保守契約は、システムの本番稼働後の法律関係を定めるものであるので、システムの本番稼働前の契約であるシステム開発契約に比べて、ユーザの業務に及ぼす影響が大きく、慎重に契約書を検討することが重要です。

システム開発契約についてはこちらの記事を参照してください。

▼システム開発契約についてはこちらから

基本契約と個別契約とは?IT法務に精通した弁護士が解説

それでは、説明していきます。

システム保守契約とは?

システム保守契約とは、システム開発契約に基づきシステム開発が終了した時点で、ユーザが継続的に業務への支障なくシステムを使用できるようにするために締結されることが多いです。

ITシステム開発では、短期間に消費されて消滅するものではなく、ITシステムという継続的に支障なく安全に使用できるシステムが商品ですから、システムの納入を受けたユーザとしては、アフターサービスを当然に求めることとなります。

システムを納入したベンダとしても、単なるアップデート作業が必要にすぎず対応に要する手間が少ないにも関わらず、システムがうまく稼働しない場合にシステム開発自体に問題があるとして責任追求されることに対する対応の手間やコストが高くなります。

そこで、システム保守契約は、システムの本番稼働後において、システム開発契約に含まれないベンダのサービスについて正面から定めるものになります。

システム保守契約の必要性

システムに関する問い合わせへの対応

ITシステム開発契約に基づきITシステムが納入される際には、ベンダからユーザに対してITシステムの使用方法とマニュアルデータ又はマニュアル書面が提供されることが多いでしょう。

しかし、これらのみで不十分なことも多く、ユーザからベンダへの問い合わせの需要は必ずあります。

システム開発契約において、システム本番稼働後の問い合わせにつき規定していることもありますが、これの範囲などについてより具体化・明確化するとともに、ユーザとしては、有償のサービスとしてベンダに責任ある対応をしてもらうために、システム保守契約を締結することが実務的に重要になります。

ベンダとしても、有償のサービスとして提供することにより売上となるうえ、問合せ対応のコストの上限値を把握できることになり、ベンダ・ユーザともにシステム保守契約を締結することにはメリットがあります。

システムの不具合への対処

システム開発契約では、開発段階において請負契約に基づく契約不適合責任がベンダの責任としてあるため、システムの不具合への対処はこの責任を果たしてもらうことで足りるのではないかと思われるかもしれません。

しかし、契約不適合責任について、システム開発契約書では「検収完了時から●年間」「検収完了時からシステムの本番稼働後1年間」というように、契約により修正してシステム開発の受託者に過分な負担とならないようにすることも多く、システムの使用期間に比べると短期間であり不十分となっています。

システム保守契約は、システムの不具合について、システム開発契約では期間的に足りないところをカバーするという意味があるのです。

仕様変更・アップデートへの対処

システムの不具合については、期間的には不十分ではあるものの、システム開発契約に基づく契約不適合責任を追求できる余地がありました。

しかし、仕様変更やアップデートについては、システムの「不具合」ということはできず、契約不適合責任を追求することさえできません。

こららの仕様変更やアップデートに対してベンダからユーザに保守業務を行うためにも、システム保守契約が必要となります。

システム保守契約において抑えるべき法的ポイント

第三者ソフトウェアの組み込み等

納入されたITシステムには、ベンダとユーザ以外の第三者が提供するソフトウェアが組み込まれていたり、これと連携されていることがあります。

ベンダとしては、この第三者が提供するソフトウェアが稼働しなくなったり、これらに関する保守業務が終了した場合には、ユーザに対して責任のある保守業務を提供できなくなります。

そこで、これら第三者が提供するソフトウェアの稼働停止や保守業務停止に伴い、ベンダとユーザの保守契約を終了させるとの規定を定めておくことが考えられます。

偽装請負の防止

実は、システム保守契約においては、偽装請負となってしまうリスクがあります。

ユーザからベンダに対して、システムに関する問合せをする際に、ユーザの社員からベンダの社員への指揮命令という状態が生じてしまう必要があるのです。

これを避けるために、ベンダの問合せ窓口としては、特定の個人の連絡先を指定するのではなく、グループチャットや複数人へのメールの一斉送信などを用いる必要があります。

なお、ユーザの問合せを窓口としては、担当者を指定しておくことは業務の効率化という観点からしても有益です。

▼偽装請負についての記事はこちらから

IT法務に関する偽装請負で注意すべき点について弁護士が解説

システム開発契約の契約不適合責任との関係

ITシステム開発では、システムの不具合に関して、先行するITシステム開発契約の契約不適合責任で対応するのか、それとも、後行するシステム保守契約の義務として対応するのかということが曖昧になってしまうことが往々にしてあります。

しかし、このような状況はベンダ、ユーザ双方にとって好ましくありません。

というのも、ベンダとユーザ双方にとって、無償の契約不適合責任での対応となるのか、有償の保守業務としての対応となるのかという点について予測可能性が損なわれるためです。

また、ITシステム開発契約の契約不適合責任は、「契約不適合」といえるかという点に関してベンダとユーザとの間で合意を形成する必要があり、この点に関しても合意形成に時間がかかる可能性があり、システム不具合の早期補修という点からも好ましくありません。

そこで、システム開発契約が終了した時点で、システム保守契約を締結し、システム保守契約の締結日ないし保守開始日以降はシステム開発契約の契約不適合責任を排除するとの規定をシステム保守契約に規定しておくのが有効な解決策になると考えます。

この点からしても、システム保守契約を適時に適切な内容で締結することが重要なのです。

システム保守契約を弁護士に依頼するメリット

以上のとおり、システム保守契約においては、法的ポイントを意識したドラフトやレビューが必須となります。

システム保守契約に精通した弁護士に依頼することで、自社の事業にアクセルをかける契約書を作成することができます。

スタートビズ法律事務所では,システム保守契約に関する相談をお受けしております。お気軽にご相談ください。

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最終更新日: 2023年2月8日 by it-lawyer

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