ITシステム開発での損害賠償責任について弁護士が解説

訴訟

こんにちは、IT企業のための弁護士、宮岡遼です。

今回は、ITシステム開発での損害賠償責任について説明したいと思います。

ITシステム開発では、仕様変更などをめぐって損害賠償が問題になることが多く、システム開発の着手から完成までに長期間を要することが多いことなどから損害賠償額が高額化する傾向があります。

しかし、契約書の作り込みや早期の対応でリスクを軽減することが可能になります。

それでは、説明していきます。

システム開発で損害賠償責任が発生する法的根拠

システム開発では、契約上で決めた義務が遅滞したり、受託者側の責任で履行することが不能になった場合の債務不履行責任と、契約の完成品として定めたものが完成されなかった場合の契約不適合責任があります(法律的な正確な分類としては、契約不適合責任は債務不履行責任の一部と整理されています。)。

システム開発では、契約を締結するときにこれら損害賠償が問題となった場合に備えて契約書を整備したり、日々の業務フローを整備しておくことが重要になります。

システム開発の委託者としては、受託者に依頼したのに結局システムが完成せずまた新たに別の受託者にシステム開発を依頼しなければならない場合などに、時間やお金の損害が大きいですが、これをしっかり請求して回収することができるようにしておく必要があります。

システム開発の受託者としては、委託者の不合理な仕様変更の要請などによりシステムの開発が頓挫した場合なども想定して、損害賠償責任の内容を合理的な範囲に限定しておく必要があります。

契約書による損害賠償責任への対策

賠償する損害の種類

よくみられるのは、賠償する損害を「直接損害、現実損害、通常損害に限る」というような規定です。

しかし、「直接損害」「現実損害」という言葉には明確な規定は存在せず、「通常損害」と対置される「特別損害」との線引きも明確なものはありません。

規定の仕方としては、「逸失利益を含まない」「特別の事情から生じた損害に限る」などと積極的に規定する方がリスクは軽減されます。

もっとも、上記のような規定をした場合には、裁判所で反対解釈されてしまい、「それら以外の損害は全て含む趣旨の規定である」として、想定外の損害まで賠償責任を負うリスクもあります。

この点については、各損害項目の裁判例での扱われ方や当該契約の実情に応じて、それぞれ規定の仕方を決定する必要があります。

損害賠償額の上限

システム開発においては、期間が数年に及びものも珍しくないことなどから、損害賠償額が莫大なものになってしまう場合があります。

そのため、賠償額を合理的な範囲に限定する趣旨で、あらかじめ損害賠償額について上限を定めておくことがよくあります。

例えば、「ただし、損害賠償の額は、当該損害が発生した時点において本契約に基づき相手方から受領していた金額の合計額を上限とする。」などの規定です。

もっとも、契約の内容や一般の取引通念からしてあまりにも低い金額を損賠賠償額の上限として定めた場合には、裁判所で当該規定が無効となり、上限規定として機能しないリスクもあります。

この点については、過去の裁判例や当該契約の内容などからして、合理的な範囲の上限規定を設定しておく必要があります。

損害賠償責任を負う期間と起算点

民法改正により、契約不適合責任を追求できる期間制限について、契約不適合があることを知ってから1年間となりました。

民法改正前は、目的物の引き渡しから1年以内に目的物の瑕疵の修補等の請求をする必要があったことに比べると、システム開発の受託者からするとかなり責任が加重されたことになります。

もっとも、この点については契約書で変更可能であるので、「検収完了時から●年間」「検収完了時からシステムの本番稼働後1年間」というように、契約により修正してシステム開発の受託者に過分な負担とならないようにすることもあります。

システム開発案件で損害賠償責任が発生する主な要因

システム開発では、仕様の変更、完成品に対する協議の不調や認識齟齬が典型的なトラブルの発生原因として挙げられます。

特に一定規模以上のシステムの開発となる場合には、要件定義段階で明確な完成品の姿を描くことが困難であり、ユーザーの意向、市場環境などによって段々と完成品の輪郭を明確にしていくことも多いです。

そのような場合には、システム開発の委託者が想定していた以上の開発対象・開発工程が必要となり、想定外の追加の委託金額が提示されるなどして紛争になることもあります。

また、仕様の変更要請が多岐にわたる場合には、当初の合意の範囲内なのかということをめぐっていずれかの段階で意見が異なることもあります。

これらに対しては、各段階で合意書を締結しておく、その合意書内容どおりにならない場合でも合理的な説明義務を履行した場合には責任が軽減・免除されると定めるなどのアイデアで委託者側・受託者側の双方にとって合理的な方法をとっておくことなどが考えられます。

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IT企業特有の契約書・利用規約について

損害賠償責任に関する問題を弁護士に依頼するメリット

以上のとおり、ITシステム開発においては、損害賠償責任が問題となることを常に想定してその対策をしておく必要があります。

ITシステム開発の損害賠償の問題に精通した弁護士に依頼することで、リスクを最小化し、自社の事業にアクセルをかけることができます。

スタートビズ法律事務所では,ITシステム開発に関する相談をお受けしております。お気軽にご相談ください。

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最終更新日: 2023年5月12日 by it-lawyer

この記事を執筆した弁護士

スタートビズ法律事務所 代表弁護士

スタートビズ法律事務所代表弁護士。出身地:京都府。出身大学:東京大学。 主な取扱い分野は、「契約書作成・チェック、問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、顧問弁護士業務、IT・スタートアップ 企業の法律問題」です。

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